小雨の降る中を、西に向かって走った、登り坂とトンネル、いくつかのカーブが続き雲がどんどん近づいて来る。トンネルを抜けるたびに状況が変わり山と小 雨雲の作る風景が水墨画のようだ、軽井沢へ向かう道路のこの急激な標高の変化が時に思いがけない風景を作り出してくれたり、日常とその先にある時間との切 り離しをしてくれるような気がする、自宅を出発して、4時間、疲れも程よくたまりだして、その感じがまたいいもんだから、顔がニヤニヤしてしまう、独りで 走るのもやっぱり悪くないなと、重いハンドルを握りながら思う。
エンジンの音がうるさいせいもあって、音楽はかけない。ひたすら走る。 この車、時速100キロが限界なので、85キロくらいで走るのが丁度いい、かっこ いいスポーツカーのようにはいかない。30年も前の車、俺が壊れるか車が壊れるかのハラハラドライブ。往復14時間の安曇野ドライブは、風景と自分を楽し む旅となりました。
佐久、小諸、上田、千曲と続く上信越自動車道の下り線が気持ち良い。たか が高速道路から見た風景なのに 何でこんなに気持ちいいのだ。高台を走る高速道路の左には、千曲川沿いに拓ける町と農村、その向こうには八ヶ岳へ続く山、右側には浅間山、前方にはまもな く北アルプスが見えだすであろう予感を秘めた風景。ひたすら走るこの道路の下やその脇を通る道路は家と家の間を抜けて村と村を結ぶ田舎道、センターライン もないその道は小さな丘や畑の中を通っている、その先にはどんな風景があるのだろう、どんな物語が待っているのだろう、あー気持ちよさそうな道がありすぎ る、この道もあの道も全部走ってみたい。28年前、少年が走り抜けて行った土地を新しい道を使って走り抜けてみた。