平野長蔵

標高1670メートルの湿原にはニッコウキスゲと綿スゲの花が一面に咲き乱れ、湿原の向こうのブナやトウヒの原生林からはカッコウのなき声が聞こえていた。こんな山奥、そしてかなりの標高の土地に初めてこの風景を目にした人はどのような気持ちでこの湿原を歩いたのだろう、この地に山小屋を初めて開いた平野長蔵の墓の前から、沼とその山小屋を眺め、僕は心の中で「ありがとう」とつぶやいていました。